睡眠時無呼吸症候群(SAS)

睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、高血圧や心臓疾患と深い関係があり、当院では循環器専門医として診療を行なっております。睡眠に関する様々な問題について、重症度や症状に応じた治療をご提案します。お気軽にご相談ください。

昨今のストレス社会では、なかなか寝付けない入眠障害や何度も目が覚めてしまう中途覚醒などの睡眠障害を訴える患者が増えています。睡眠時無呼吸症候群も睡眠障害の一つであり、患者さまの生活習慣が関わることが多く、単に薬を服用するだけで治療できるものではありません。

睡眠時無呼吸症候群(SAS)の原因・症状

医学的には、10秒以上気道の空気の流れが止まった状態を無呼吸とし、それが7時間の睡眠中に30回以上、もしくは1時間に5回以上みられると睡眠時無呼吸と診断しています。この病気が怖いのは、寝ている間に生じる無呼吸が、起きている時の私たちの活動に様々なリスクを生じさせる可能性があります。
寝ている間の無呼吸になかなか気づくことができないので、治療に至らない人を含めると日本には300万人以上の睡眠時無呼吸症候群(SAS)の患者がいると言われています。

睡眠中に呼吸が止まってしまう原因は大きく分けて2つ、
「閉塞性睡眠時無呼吸タイプ(OSA)」と「中枢性睡眠時無呼吸タイプ(CSA)」があります。

9割くらいのほとんどの患者さんは閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)型であり、主な原因は肥満です。肥満によって上気道が圧迫され、首や喉の脂肪、扁桃肥大、舌根(舌の付け根)や口蓋垂(のどちんこ)、軟口蓋(口腔上壁後方の柔らかい部分)の沈下などが狭窄を引き起こします。
仰向けで寝るといびきが出る場合があり、これは気道が狭まっている兆候であり、睡眠中に筋肉が弛緩することが影響しています。横向きや座っていてもいびきが続く場合は注意が必要です。

主な症状としては以下のようなものがあります。

【寝ている時の症状】
・いびきをかく
・いびきが止ったあと、大きな呼吸とともに再びいびきをかく
・呼吸が止まる
・むせる
・何度も目が覚める

【起きた時】
・口が乾いている
・頭が重い、ズキズキする
・熟睡感がない
・スッキリ起きられない
・体が重く感じる

【起きている時】
・集中が続かない
・強い眠気がある、よく居眠りをしてしまう
・常にだるさや倦怠感を感じる

SASはなぜ危険なのか?

① 居眠り運転が5倍に

睡眠時無呼吸症候群(SAS)によって睡眠の質と量が落ちると、日中の判断力・集中力・作業効率・活力が低下する状態になり、強い眠気を感じたり居眠りがちになったりします。
交通事故の発生率が上がってしまうため、国土交通省も警鐘を鳴らしています。

「運転中の眠気」を経験したことがある割合は、SASでない人に比べてSAS患者は4倍
「居眠り運転」ではなんと5倍という調査結果が報告されています。

(参考文献:臨床精神医学1998:27:137-147)

② 高血圧の原因に

日本高血圧学会の診療ガイドラインでは睡眠時無呼吸症候群(SAS)が高血圧の原因になる疾患のひとつとして位置づけられています。
無呼吸状態から呼吸が再開する時、体は寝ていても脳は起きている覚醒状態になります。本来寝ている間は副交感神経が優位になっていますが、この覚醒によって交感神経が優位になってしまい、血圧が上昇します。
SASが原因の高血圧の場合は、適切にSASを治療すれば高血圧の改善も見られます。

(参考文献:New England Journal of medicine 2000)

③ 脳卒中の原因に

脳卒中「脳の血管が出血(脳出血)したり、詰まったり(脳梗塞)する病変」は、日本人において癌・心臓病に次ぐ3番目の死亡原因ですが、死に至らない場合でも、後遺症として麻痺や言語障害が生じる病気です。
睡眠時無呼吸症候群(SAS)の重症者は脳卒中の発症リスクが健常者の3.3倍高いことが報告されています。

(参考文献:New England Journal of medicine 2005)

④ 糖尿病の原因に

睡眠時無呼吸症候群(SAS)が糖尿病を誘発するメカニズムは明確には解明されていませんが、睡眠時無呼吸症候群(SAS)の重症度を増すごとに、糖尿病を合併する割合が上昇していくとされています。
原因は、「間欠的低酸素血症(低酸素状態と正常な酸素状態が交互に繰り返される現象)」と、無呼吸状態から呼吸が再開するときの「覚醒反応(脳が覚醒した状態)」が糖代謝の異常と関連すると推測されています。

(参考文献:Am J Respir Crit Catr Med 2005)

⑤ 心臓病の原因に

睡眠時無呼吸症候群(SAS)によって低酸素状態になると、心臓は酸素を取り入れようとして急激に心拍数を上げます。このとき、体は寝ているのに心臓は激しい運動をしたような状態になるので負担となり、その状態が長く続くと心臓の機能が低下する可能性があります。

また、低酸素状態と呼吸が再開された後の正常な酸素状態を周期的に繰り返していると、体内の細胞が酸化する「酸化ストレス」にさらされ、血管が傷つきやすくなります。その結果、動脈硬化を進行させ、心臓病を発症するリスクが高まります。

SASが引き起こす心臓病としては、不整脈・狭心症・心筋梗塞・心不全などがあります。

検査

SASの診断に用いられる検査法は主に2つあり、ご自宅で行う「簡易検査」と、入院して行う「終夜睡眠ポリグラフ(PSG)」です。「簡易検査」は、鼻の呼吸の状態をチェックするフローセンサーと、体内の酸素濃度をチェックするSpO2センサーを寝る前に装着して、眠っている間にモニタリングされます。ご自宅で手軽に検査できるのと、保険が適用されることがメリットです。

当院では、検査会社を通じてご自宅に郵送された検査機器を使用していただき、後日クリニックで結果を説明しております。必要な際には一晩、精密入院検査をしていただく場合があります。
SASの診断とその重症度によって治療の選択をします。

当院での治療法

当院では主に中等症〜重症の場合に適応となる「CPAP(シーパップ)療法」を行なっております。
睡眠中に、鼻に装着したマスクから適切な圧力をかけた空気を送り込むことで気道を確保し、「無呼吸」や「低呼吸」の状態を改善します。現在のSASの主流の治療法であり、治療効果と安全性が確立されています。

CPAP療法を始めた多くの患者さまが、「よく眠れるようになった」「日中の眠気がなくなった」など、劇的な効果を実感されています。

CPAP治療は保険適用が認められており、使用方法に関しては専門スタッフが丁寧に指導しますので、安心して長期的にご使用いただけます。